深淵の使者はかく語りき

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 その手には、片手に収まるサイズのペンライトが握られていた。 「黄園が販売していた主なアイテムは、大衆向けのネット課金アイテムです。  でも、それは隠れ蓑。  黄園がメインで販売していたのは、この『銀の鍵』です」  依代は語りながら、片手で器用にペンライトのスイッチを入れた。  その光を、左手にある銀の鍵に向かってかざす。 「教団の中で選ばれた者にだけ、黄園はこの鍵を売っていた。  ……黄園のパソコンから、販売者名簿が見つかりました。  『銀の鍵』を販売した相手は、全員この教団のメンバーです。  そしてその全員から、隠しサイトへのアクセス履歴が検出されました。  さらに、その半数は現在行方不明」  鍵の柄に当たった光は、おぞましい彫刻にあるいは弾かれ、あるいは透過し、白い壁に影を落とす。  その影は、彫刻からは想像もつかないほどに、シンプルだった。 「隠しサイトのアドレスと、この部屋の電子ロックの解除コードです」  壁に投影された影は、http:// から始まるアルファベットと、9桁の数字の配列の形をしていた。 「『選ばれた者だけが集う場所』という名目で、用意されたサイトだったのではないですか?」
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