深淵の使者はかく語りき

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 彼女がゲーム会場に現れた時、本当に女神が降臨したのかと、思ったんだ。  クトゥルフ神話をベースにしているという特性上、ゲームはバッドエンドの方が圧倒的に多かった。  だが私達は、そこにのめり込んだ。  生還率が低いからこそ、燃えた。  誰しもそういうところはあると思う。  だが好きでやっていても、あまりにも進展が見えなければ、心が折れそうになる時だってある。  ……そんな時に現れたのが、月様……ツキナだった。  叩き出される、圧倒的な生還率。  彼女がゲーム会場に出入りするようになって一週間で、彼女は会員達に神とあがめられるようになった。  希望の女神だ、と呼ばれるようになった。  その熱は、オフ会を経て、さらに高くなった。 『元々、好きなんです、クトゥルフ神話。  ……だからかな?  どんな目が出ても、どうやって進めればいいのか、自然に分かる気がするんです』  現実世界のツキナは、私の想像以上に美しく、そして若い、少女だった。
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