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……私が言うのもなんだが、時間のかかるこのゲームにのめり込む人間は世捨て人が多い。
その中でツキナは、浮いている存在だった。
圧倒的に若く、美しいツキナ。
ゲームの腕前だけではなく、ツキナ本人にのめり込んでいく人間が生まれるまでに、大して時間はかからなかった。
ツキナも、自分を構ってくれる人が増えたことを、素直に喜んでいた。
そこで、気付くべきだったんだ。
現実世界でツキナが満たされていれば、こんな世界へ足を踏み入れることなんてないはずだと。
「……仮にそうだったとして」
ゲーム会場のチャット機能を使って流された『私はバグ=シャースの生贄になります』というメッセージ。
その日の午後に流れた、女子高生服毒自殺未遂のニュース。
妙な不安に駆られた電話をかけたら、出たのは彼女の母親で。
ツキナが、高校の化学実験室にあった実験試薬をあおって服毒自殺を図ったことが、分かった。
「なぜあなたはそのことを、私に対して語るのですか?
こんな所まで、あえて姿を現して」
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