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「ない!ない!ない!!」
ある大学のあるサークル、漫画研究部。大学本館から少し離れた場所にある、少々寂れ気味な4階建ての建物の最上階に
その部室がある。
「何にも無ぇじゃん!」
そう言いながら、雑多に散らかった部室中を隅から隅まで漁っているのは漫画研究部の幹事である浅頭ヨシキ。
「ねぇねぇ、簑島!原野に頼んでた道具ってどこにあるか知らない?」
浅頭が部室の真ん中に設置された机に突っ伏してひたすら漫画原稿にペンを加え続ける簑島ケンタに優しげに問いかける。が、反応がない。
反応がない簑島に浅頭が怪訝な顔で近づき、突っ伏した顔を覗きこもうと少し大きめな体を屈めると簑島の両耳にイヤホンが刺さっているのが見えた。
浅頭がおもむろに簑島のイヤホンのコードを掴み、乱暴にイヤホンジャックを耳から引っ張り出す。
「っいったぁっ!!」
乱暴に引き抜かれたイヤホンジャックが簑島の耳に痛みを残して宙を舞う。
「簑島ぁっ!!一大事なんだよ!!」
耳を抑えて痛みに悶える簑島に浅頭が追い撃ちをかけるように言葉をぶつける。
「原野が買ってきた道具はどこにあるのかって!あれがないとマズいんだよ!」
簑島の耳の痛みが和らぎ、ゆっくりと言葉を返す。
「原野・・・まだ道具買ってないんじゃないの?」
「は?」
「いや・・・多分だけどね?」
二人の間に僅かな沈黙が流れる。
浅頭の眉は寄りっぱなしだ。
「おつかれぇ・・・」
二人の沈黙を破ったのはゆっくりと開く部室の扉の音、そして覇気の無い疲れきった原野コウタの声だった。
ふっくらと肉付いた四肢と寝癖まみれの髪を揺らしながら、ヨタヨタと部室に足を踏み入れていく原野コウタの背後から続いてさらに3人。
金髪、鋭い目付き、どこへ出ても一目置かれるファッションセンス。所謂オタクサークルのメンバーらしからぬ風貌をした渡部タカヤ
日本人離れした堀の深い目鼻、女性が羨む美しく長い睫毛をたくわえた、これまたオタクサークルらしからぬ容姿の高海ケント
少し小柄で大きめなメガネをかけた中岡タケル
3人も原野同様疲れきった表情でヨタヨタと部室の机に添えられた椅子に乱雑に腰をかけていく
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