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簑島がいたたまれない様子でペンを置き、辺りに散らばった本を静かに集め始めた。
「ほら、原野行こう。早くしないと浅頭がストレスで死んじゃうだろ!」
中岡がヘラヘラしている原野の手をぐいっと引っ張る。
「それに、今日は早めに用事を済ませたいから・・・」
中岡の一言に原野が何かを思い出したかのような表情を見せる。
「そうだったそうだった、悪い悪い!じゃあな浅頭。不祥!原野コウタ、買い出しに行って参ります!」
「ちょっと何?中岡何かあんの?」
浅頭の質問を明らかに無視して原野と中岡が部室を颯爽と後にした。
あ浅頭は釈然としなかったが、今はいちいち気にしている場合ではないと高海の方に向き直る。
「そんでさ高海」
「嫌だ」
気だるそうな高海の気だるそうな切り返しに、浅頭はひるまない。
「チュウさんのとこに一緒に行こう」
「絶対嫌だね、嫌だ。一年とか二年とか、後輩に行かせりゃ良くね?」
高海の目がみるみる死んだ魚の様になっていく。が、浅頭はひるまない。
「一年二年が行ってもいろいろ無理でしょ。チュウさんもう8年学生やってるから・・・そもそも知らないだろ」
「俺あいつとは、できれば話したくもないんだって」
高海と浅頭の問答を聞いてられなくなったのか、渡部がスマホを置いて高海に話しかけた。
「ケント、行ってあげたら?ちょっと話せば済むんでしょ?」
渡部の言葉に少し考えるような表情を見せる高海を、浅尾は見逃さなかった。
「な?チュウさんが作ってる「アレ」がないと学園祭の目玉がないんだよ!」
高海があー、とかうー、とか言いながら額を手で抑え始めた。
「っていうか俺も一人で行きたくなんだって、わかるでしょ!」
高海が机をバンッと叩いて立ち上がる。
簑島が積み直した漫画たちも衝撃で崩れ去る。
「わかった、一緒に行くよチクショー・・・!ったく・・・!」
高海の了承を得た所で、浅頭が簑島に目を向ける。
簑島は再び辺りに散らばった漫画を見つめながら口をあんぐりさせていた。
「簑島、倉庫の片付けを頼んだ!」
浅頭のお願いに、簑島はあんぐりとした表情のまま2、3回程頷いた。
高海と浅頭は部室を後にする。
部室には簑島、渡部の二人。
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