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黙っていれば霞は美少女と表現出来た。
しかし、周りからの評価は『残念な奴』。
それは彼女が二次元を好いたから。
それに男性よりも、女性を好いた所に理由がある。
それ故の『残念な奴』なのだ。
しかし、それは前までの世界での話であり、今現在に至っては矢で射ぬかれて発狂する少女。
それでいて、全裸ときたら誰しもが興味を持ち始め、これから『し、死にたくないんです……だ、誰か…助けて、下さい……! 何でもします、からっ!!』
そんな誰もが欲望にまみれた展開を待ち望んでいる中、霞は鈍重に顔を上げて言い放つ。
「私を殺したのは……ダレダ?」
武装している一団が、全裸の少女一人に気圧された。
霞の瞳は赤黒く染まり、黒目の部分が反転して白く浮き上がり、 その発言だけで威圧感がビリビリと伝わり、武器を持つ手に自然と力が入る。
「オマエカ?」
すると一団で、霞に近い兵士の前に音も起てずに現れ、簡易な質問を投げ掛ける。
「い、いいいいえっ、見ての通りっ、槍兵ですので……!」
不意に起こった事象に兵士はすくみ膝が笑い、槍を抱き締めながら顔面蒼白で冷や汗が溢れ出るも、なんとか言葉を紡ぎ出した。
これでは効率が悪いと、僅かに残った思考で霞は考える。
(犯人は弓)
また姿を消すと、丘の上に直立する。
「ワタシヲ、コロシタノハ、ダレダ?」
その様はまるで、民衆に演説をする王族に近い。
が、内容はそんなものと比べ物にならない物。
眼下に広がる無数の人物を、ゆっくりと目を凝らして確認していく。
静寂が辺りを包み、今が戦場だったと忘れるくらいに、違う意味で兵士達に緊張が走る。
「く、喰らえ! 化け物!」
その空気をぶち壊す言葉が終えるのと同時に、放たれた矢は霞に向かって勢いを増す。
先程の様に訳も解らない心持ちなら、再度簡単に射ぬかれただろう。
矢が霞へと刺さる瞬間、その動きは不自然に止まった。
まるで、そこだけ時間が止められた様な止まり方で。
実際にはそんな訳ではなく、霞の右手がそれを阻止していた。
自分に向かって飛んでくる矢を掴む等、蛮行に近い。
失敗すれば、死しか残されていないからだ。
だが、今の霞は発狂するも集中力が極限にまで高まっていた事で、それを可能にしてしまった。
まさに、化け物である。
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