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「オマエダナ」
「ヒィッ!?」
矢を放った者を確認するのと、目の前にくるのが同時でその為、弓を携えた兵士は決死の表情から、情けない顔に早変わりした。
「いいやっその、ソイツが始めに打ったから!?」
「はっ!? なんだお前!?」
「大体、お前が弓を薦めなかったら、俺は剣を選んでたんだ! なっ? だから俺は悪くないんだよっ!」
恐怖に支配された兵士は責任を転嫁し、あまつさえ自分を擁護しようと必死な様だが、あいにく今の霞には嘘やおべんちゃらを宣おうと、大して意味等ないに等しく、当の本人は左右の口角を吊り上げ、真っ赤に染まった口内を笑みと共に露にした。
「う、ううっうわぁぁぁぁぁあああ!!」
自分の発言が、意味の無い事だと理解した兵士は目をギュッと瞑りながら、弓を高く振りかぶって打撃を叩き込もうとする。
本来の使用目的とは異なるが、効果はなくはない。
ブォンッと、木の棒を力一杯振った時の風切り音。
死にはしないが、相手は怯みはするだろう。
「あ、ああ……」
残念ながら、したのはまさしく『風切り音』だけ、虚しくも空を切った。
しかも相手は横にずれてかわしただけ、ただの少女の様相なのに何をしても勝てない、そんな風に思う兵士は戦き、後退りしてしまう。
誰かが助けてくれるんじゃないか、そんな一筋の希望を抱いていた矢先、霞が動きをみせた。
「目には目を、歯には歯を。死には……死を……!」
先と変わらぬ表情で呟く霞、解るような解らないような事を呟いた。
この兵士に限った話であるが。
「殺戮シリーズ……『鉄の乙女』」
霞の言葉を皮切りに、霞を中心として黒い煙の様な物が辺りを支配していく。
それが治まった時、兵士の目の前には重厚な少女の像が出現していた。
そして、鈍重に開かれていく『鉄の乙女』、中には空だがうっすら何かが乾いた様な痕がこびり付いている。
「く・い・こ・ろ・せ」
[了解でーす]
霞の声に呼応した鉄の乙女は、何故か可愛く返事をすると同時に、兵士に突っ込んで受けに押さえ付けた状態のまま加速、その速度により身動きが取れない兵士。
周囲をぐるりと回って途端にピタリと止まり、反動で投げ出される事もなく、兵士の胸・腰・膝が受けから伸びる拘束具によって、気付かぬ内に固定されていた。
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