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準備が整ったのか、鈍重に開かれた筈の棘(トゲ)が付き、少女の笑む絵が描かれた蓋が、いやに早く兵士へと迫った。
「い、いやだ……! 死にたくないっ……!!」
[だーめ、いただきまーす]
「あぁぁぁぁぁぁ!?」
兵士の断末魔と、閉まるのは同じタイミングで、『鉄の乙女』の隙間からは、夥しい血の量が溢れ出てくる。
時おり、咀嚼している様な音が聞こえる為、他の兵士はみるみる内に青ざめていき、その場にへたり込む者が続出した。
それは殺されてない相手側の兵士達の話で、殺された兵士の仲間達は立つ事もままならず、戦々恐々と這いずったり二人三脚だったりと、各々が戦場を後にしようとしていた。
あの様な、不可思議な能力を使われたのだ。
戦意を失ったとしても、誰も文句は言わないだろう。
[ご主人様]
逃げ出した兵士達が小さくなった頃、静まり返る戦場だった筈の平地で、場にそぐわない鈴を転がす様な可愛らしい声が聞こえる。
「……あれ……私、全裸で、何やってんの……?」
鉄の乙女が呼び掛けた事で我に返ったのか、瞳の狂気は収まりを見せ、元の黒色の眼に戻っていた。
自分は死んだはず、そう思って、矢によって貫かれた胸を確認すると傷が無い事よりも、全裸と言う事に気が付いた霞の反応は割りと淡泊なものだった。
「ぜwwwwんwwwwらwwwwwなにゆえwwwwwwwなにゆえからのなりけりwwwwwwww」
霞はどっと笑い、普通であれば悲鳴の一つでも出ると思うが、この辺が霞の残念な点の一つに含まれるだろう。
「落ち着けwwwwwまずはもちつこう私wwwww……ふぅ……ぶふっwwww駄目wwwwww全裸つおいwwwwww嫌でも思い出しちゃうwwwwwwwwあ進行形ですかwwwそうですかwwwwww」
頭を抱え、冷静に思考を始めようと試みるも、彼女の中で『全裸』と言うキーワードは地雷の様。
直ぐ様に吹き出し、再びお腹を抱えて笑い始めてしまった。
[せめて、服をきませんか]
冷静に突っ込む鉄の乙女の声に気付き、霞は笑いを抑え込んで横から聞こえてきた声の方に顔を向ける。
「……誰、こんな所にモトを召喚したのは?」
[ご主人様ですよ、それにモトではありませんからっ]
「モトじゃないんだwwwwwwごめんぬwwwwwww」
[うん、大丈夫だよ]
「……キィィィェェェィイヤァァァァシャベッタァァァァァ!!」
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