プロローグ

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 教室内にオレンジ色の西陽が差し込み、帰りの予鈴が鳴り響くと、生徒達はたちまち立ち上がり教室の出口から出ていく。  ガヤガヤと騒いで出ていく一団はあっという間に居なくなり、もぬけの殻と化した教室に残るは、二人の少女のみでその内一人がこの物語の主人公である。 「霞ってさー、前々から思ってたけど、どっかのジムにいるでしょ?」 「私、水タイプ苦手なりけりwwwww」 「じゃあ、何タイプか好きなの?」 「モッチーかなwwwww」  些細な世間話で盛り上がっているが、質問を投げ掛けられた少女が柊 霞(ヒイラギ カスミ)。  露骨に草を生やして台詞を吐いているが、これでも華も恥じらう十七歳の高校二年生で、青春真っ盛りである。 「昨日の黒羊面白かったよねぇ!」 「私、黒羊より王子と魔女とプリンセス派wwwwww」 「あー、確かにいいよねぇ~」  一つ言い忘れていた、彼女は青春真っ盛りと言ったがそれは三次元の話ではなく、二次元に限った話である。  類は友を呼ぶ。と言う言葉がある様に、霞に話し掛ける少女もまた然り。  可哀想な事だが一身上の都合により、名前はまだない。 「あっ、今日って演歌の王子様やるんだった、ばいばいっ! またねっ!」 「ほいほい、また来週!」  名無しの少女に声を掛けて見送ると、霞もまた鞄を手にして夢現な週末、連休に思いを馳せる。  明日は土曜日、誰もが喜ぶ休日である。  しかし、彼女には遊びに出掛けると言う概念がない。 「今日から撮り溜めたアニメを、見るぞっ!」  彼女がピョンと跳び跳ねた時、ガツン! と言う音が聞こえると机に突っ伏し、くぉぉぉぉぉ……! と、悶絶して地獄からの死者ばりに唸っている。 「……ニーがぁ……! 私のニーさんがぁぁぁぁぁぁあああ!!」  思わず痛みに敵わなかった絶叫が、教室から廊下に掛けて轟く。  因みに、ニーさんとは膝の事であり、どうやら机に膝を打ったらしい。 「でも負けないwwwwぶぉーっと鼻息飛んでく友っ達!wwwドシンと足踏み先生尻っ餅!wwwだけど心はポッカポカアッー!wwwwww」  それでも、彼女はめげない。  そして、しょげない。  しかし、某恐竜ではないのは明らかである。 「柊ー、うるせーから早く帰れよ」 「だぁぁぁらっしゃあああ!! 貴様に、貴様なんかにっ……この痛みが解るかっ!」 「帰れよ」
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