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「当たってる……かたいの……っ」
「センセーがそうさせたんだよ……センセーだけ逝くのズルい。
俺も……気持ちよくして……」
「ひゃぁっ!」蓮の腕に身体を反転させられ、向い合わせの状態にされた翠の目に、色気を滲ませた蓮の顔が映る。
顔が火照り、身体の芯が熱を帯びてずくんずくんと疼くものの、翠はどうしても首を縦に振れなかった。
「やだ、だめっ……だって、だって蓮は……本気じゃないんでしょう?
わたしは……初めては好きな人じゃないといやなの……!」
蓮は受験を控える高校三年生、自分は大学生で家庭教師のバイトをしながら学校に通っている。
蓮とは家が隣同士だが、蓮の家は事業家で裕福な暮らしをしており、逆に翠の家は一介のサラリーマン家庭。
付き合いなど一切なかった、たまたま家庭教師のバイト先が、蓮だったというだけで。
親のリストラで恋をしている余裕もなく、通学しながらバイト三昧の日々を送ってきた。
おしゃれをする余裕もなく、彼氏がいる友人を羨ましく思いながら生きてきた。
蓮は大きなため息を長く吐ききると、徐々に夜の気配を匂わせる窓辺へと目を向けた。
「あの窓からさ、センセーの部屋が見えるんだ。
はじめはなんとも思わなかった。
でも、ふと見るといつもセンセーが居て、いろんな表情を見て、そうしている内にいつしかセンセーに興味を抱いた」
そう言って立ち上がった蓮は窓辺に寄せられるように置かれている机の引き出しから、一枚の紙を取り上げ、絨毯に座り込んだままの翠の前で放った。
ひらりひらり舞って絨毯に落ちたその紙を取り上げた翠は驚きで息を止めていた。
「全国模試……い、一位…?」
見たこともない偏差値がずらりと並んでいた。
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