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「蓮、あなたどうして……!
だって、あなた素行が悪くて親御さんに心配かけてどうしようもなくて、更生したいから手伝ってくれ、って――」
家庭教師として登録しているバイト派遣会社で蓮を紹介された時、彼はそう言って見せびらかすように金に染まる髪を電灯の明かりに透かした。
ピアスホールから若干滲んでいた血が、怖かった――それが蓮の第一印象だった。
「染めたんだよ、三ヶ月前、初めてセンセーに会う時に。
ピアスもその時に開けた……初めての晩には膿んで熱が出たよ。
慣れないことしたからだろうね」
翠は蓮の耳たぶにしっかりと定着したピアスをそっと指でなぞった。
「無茶して……こんなこと…っ」
翠の心の奥底からじわりじわりと染み出していく想いが涙のしずくとなって目元に浮かび上がる。
蓮の耳たぶに触れる翠の手が熱を帯びていた。
「でも、これで分かってくれる。
本気じゃない相手にこんな回りくどいことはしないって……分かってくれる」
まっすぐに自分を見つめる蓮の眼差しは真剣そのもので、翠はその誘うような瞳に吸い寄せられるようにじっと彼を見上げた。
「好きだ……翠。
もうセンセーだなんて思えない。
突き放して子供扱いしないで、俺を男として見てよ」
耳たぶのピアスに触れていた翠の手を優しく自分の口許へと誘導した蓮の唇が手の甲でチュッと音を立てた。
甘い響きに頭の中が幸せで満たされ、なにも考えられなくなった翠は、頬を伝う熱いものに隠されていた自分の気持ちに初めて気付いた。
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