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「蓮……わたしも…。
わたしもきっとあなたが好き、好きなんだわ……!
だってこんなに……ドキドキしてる……!」
トキメキという言葉があるとすれば、きっとそれはまさに今、その時。
意識した瞬間から恋は始まる。
蓮に見つめられることが恥ずかしいことだと気付いてしまった翠の顔は真っ赤に染まり、右手に優しく触れる蓮の手から伝わる熱を実感し、恥じらうあまり、目線を下に向けた。
「うん……ドキドキ……してくれてるの……伝わってくる。
翠……顔上げて」
言われた通りにそろりと上げた翠の視界に、頬の端を染めて照れている蓮の嬉しそうな顔が近付いてくる。
「れ、蓮……あの」
「キスしよ……翠……」
言われたことがあるはずもない言葉を待っていたように翠の心はきゅんと甘く高鳴り、少し濡れた唇を蓮に向け、ゆっくりと瞳をとじた。
横に流れる翠の髪に手櫛を通し、翠の期待に揺れ動く恋心を感じ取った蓮は、嬉しそうに頬を緩めた。
柔らかいものが触れた瞬間、身体にびりびりと痺れが走ったような幸せを噛み締め、翠は蓮の腕の中で震えた。
同じ『触れる』行為。
それなのにどうして手と唇ではこんなに感じる熱さが違うのだろう――
「深く……もっと深く…」
名残惜しそうに唇を離した蓮が吐息混じりに言葉を発し、翠の顎にそっと触れると、翠の鼓動は壊れそうな程激しく揺れ、心揺さぶられた翠は自分から唇を押し付けた。
“ 好き ”以外の言葉で想いを伝える方法を、翠はこれまで知らなかった。
今、こうして応えることに、求められることに、堪らない喜びを感じた。
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