第4章 お姉さまと僕(仮)

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 「魔女としての依頼で一番厄介な依頼ね……材料のほとんどは貯蔵庫にあるのだけれど、どうしても足りないものがあるのよ」  ヴェルサは高いヒールを鳴らして壁付けの薬品棚に近付くと、棚から瓶を取り上げ、一つ一つテーブルに置いていく。  並べられた瓶には薬草類なのだろう、乾燥した植物の葉や茎などが詰まっている。  瓶の蓋には丁寧にラベルが貼られ、流暢な魔法文字が並んでおり、ラグーの興味をそそった。  「あら、あなた薬草学に興味があるの?  いいわよ、折角の機会ですもの、教えてあげるわ」  二重瞼に散りばめられた星のような睫毛がふっと和らぎ、キャッツアイの流し目がラグーに注がれると、彼はドギマギしながら瓶が並ぶテーブルへと小走りに掛けた。  顔が熱いのはきっと気のせいだと思うことにした。  魔女ヴェルサが愉快そうにクスクスと笑い声を上げるのだが、その声すら小鳥の囀りのようで、ラグーは雑念を振り払おうと頭をブンブンと横に振った。  「乾燥させた薔薇の花びら、香草が4種、これは月明かりのかけら、それと、これが太陽の焦石、あとこれが……」  華奢な肢体でありながらも高い身長のヴェルサがラグーの隣に立っていた。  香のかおりだろうか、ヴェルサから漂う麝香(じゃこう)はラグーから思考能力を奪っていく。  「――聞いているのかしら、坊や?」  突然、耳元に甘い息が吹きかけられたことで、ラグーはビクッと身体を竦ませた。  一度ならず二度までも、自分はどうしてしまったのだろう。  ラグーは申し訳なさそうに「ごめんなさい……」と小さな声を漏らし、しゅんとうなだれた。
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