第4章 お姉さまと僕(仮)

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 マンダリンの鋭いキャッツアイが窓の奥で沈み行く夕陽を捉える。  「そろそろ夜が追ってくるわね。  神秘の女神ルナの刻が金のシャワーを大地に降り注ぎし時、魔女の潜在能力は最大限まで解放され、大いなる力を発揮すると言われているのよ」  「ヴェルサ様、ぼくは目的の品を持ち帰るまでは城に帰ることが出来ません。  雑用なり、力仕事なり、ぼくに出来ることがあればお手伝いします!」  ラグーの甘やかな瞳はなんと無垢なことだろう。  これから課される試練について彼は何も知らされていない。  女をまだ知らないだろう未成熟な果実に最初に手を伸ばす者が自分であると思うと、それだけでヴェルサの女の部分は興奮で目覚めていく。  長いこと味わうことも忘れていた愉悦を思う存分貪りたい。  純粋なままの少年ラグーはどのような声で啼くのだろうか。  銀の髪を振り乱して、女性と見間違われそうな細い身体と白い肌のラグーはどのように自分の内部を侵すのか。  その瞬間の表情をうっとりと眺め、額にでも飾っておきたい――そのような欲求に囚われた。  「では……あなたは国の王子と隣国の姫を結婚させ、同盟国にする計画の一部を託されているの。  この計画が失敗すれば……そうね、早かれ遅かれ戦争が始まってしまうでしょう」  「そ、そんな……!」  「大変なことよね、もっとも両国のどちらにも属さないわたしのような者からしてみれば取るに足らない話だけれど……。  この国の王子は隣国の姫とは全く馬が合わず、気にも留めない存在になってしまっている……当たっているかしら」  ヴェルサの言葉の数々に、ラグーは緊張しながらもゆっくりと首を縦に振った。  「そんな二人を無条件で恋愛関係に発展させるために必要なことがあるの。  それが……今回の依頼された薬に関係があるものなのよ」  ヴェルサの誘うようなキャッツアイの鋭い眼光がラグーをまっすぐに貫く。  だぼついた魔導服の下に隠れている彼の部分に赤い絵具が塗られた艶かしい指先を這わせて、服を撫で付けるように下へ下へと下りていく。    
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