第1章 姫王宮から

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 「……ん、く……んっ!」  ラサヴェルが腰を突き上げ、ぐぐっと最奥まで押し入った瞬間、繋がれた秘所がきゅっと収縮し、弓なりに反らされていたアイシャの身体がびくんと脈打った。  苦しそうに身体を震わせるアイシャの唇を解放してやると、甘美な波に流された切ない呻きが漏れた。  ラサヴェルは最後の収縮が止むのを見計らい、余韻で甘ったるい表情を見せるアイシャに囁いた。  「次は僕の番だね……」  妖艶な企み――悪魔のような囁きを天使の声で弾き出す欲望は留まることを知らず、戯れの余韻を残すアイシャの理性ごと深々と貫いた。  おさまりかけていたはずの熱は冷めるどころかより一層の激しさを増し、躍るように揺れるビーズの片側をラサヴェルが甘噛みした瞬間、押し寄せる快楽の衝撃に耐えきれなくなったアイシャはラサヴェルの背中に爪を立て、悲鳴に近い声を上げ、人魚が背びれをびくつかせるように跳ねた。  同時にもう一つの欲が爆発して吐き出され、二人は互いの身体をきつく抱いてその甘美なる瞬間を迎えた。  深く眠りについていた光が空の端からゆっくりと姿を見せ始めていく。  肌寒さを感じるほどだった夜風がじきに暖かさを伴い明け行くさまを感じながら、ラサヴェルは隣で疲れはてて眠るアイシャの髪にそっと手櫛を通し、満足そうに微笑んだ。  「そろそろ、支度をしないといけない……きみを置いていかねばならないこの瞬間がどれほど僕を苦しめていることか……」  ベッドサイドから忍ぶようにして降り立ったラサヴェルはバスローブを脱ぎ捨て、熱いシャワーを浴びて身体を目覚めさせた。  金糸で縁取られた豪奢な十字が走る最高位の法衣に袖を通し、教皇帽を身につけたラサヴェルは、男の顔から神に近しい大司教の仮面を取り付け、甘い秘密の箱庭から音も立てずに外へと消えていった。 第一回/姫王宮より ラサヴェルとアイシャ
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