第1章

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このまま調子のいい日が続けば退院できると言われた日、あたしはめずらしく病室で一人になった。 いつも付き添いで誰かが側にいてくれたけど、もうなんでも一人でできるし、散歩くらいじゃバテることもなくなったから、ありがたいけど過保護すぎる付き添いは辞退したのだ。 みんな忙しいだろうに、複数の人員で構成された付き添いシフトを見たときは驚いた。 とても大切にしてもらっているんだと実感したけど、申し訳なさ過ぎる。 のんびりとベッドで体を起こしたまま、窓の外を眺めていた。 昼下がりの澄み切った青い空に、真っ白い雲が浮かんでいる。 開かれたその窓からは心地よい風が流れてきて、白いカーテンを揺らしていた。 「……智樹さん、こないかな……」 ふいに会いたくなって、つぶやくと、ドアをノックする音がした。 まさか、と思って返事をすると、姿を現したのは、本当に会いたかったその人だった。 「うそ……」 「なんだよ、その顔」 驚くあたしの顔を見て、不満げな表情をしてから、智樹さんは照れたように笑った。 「今日は誰もいないって聞いたからさ」 いままでは智樹さんが来てくれても必ず誰か付き添いの人がいた。 智樹さんに会えたのはとてもうれしいのに、今こうして部屋に二人っきりでいるのは妙に気恥ずかしかった。 たくさん言いたいことや話したいことがあったのに、いざこうしてみると、もじもじしてしまう。 少しの沈黙のあと、智樹さんが口を開いた。 「あのさ……」 そのとき、ドアを大きくノックする音がした。 あたしはなぜか、とてもびっくりして、ひっくり返った声で即座に「どうぞ!」と返事をした。
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