第1章

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薄目を開けると、そこは真っ白い部屋だった。 眩しくて目をしばたかす。 ようやく目が慣れてくると、そこには、まあるくて、つるんとした顔があり、あたしを覗き込んでいた。 「おはよう、なっきお姉ちゃん。たくさん寝たねえ。えらいねえ」 ゆで玉子のような顔にきれいな瞳をのせた航くんが、あたしを誉めて、小さな手で頭をなでてくれた。 「菜月!」 「菜月さん」 たくさんの暖かい人たちが、驚きと安堵の混ざった表情でであたしを囲むように覗き込んだ。 家元、奥様、森野さん、そして、智樹さんがいた。 その顔を見て、あたしは思わず小さく微笑んだ。 「すぐ先生をお呼びいたします」 森野さんが、涙をためていた目を家元に移しそう言うと、またあたしを見て大きくうなずいてから急いで部屋を出て行った。 ああ、森野さん。 急に学校からいなくなったりして、心配かけてしまったに違いない。あとでちゃんと謝らなければ……。 寝ぼけた頭でぼんやりとそう思ってから、自分の腕に点滴らしき管がついているのに気がついた。 あたしはいったいどれだけこうしていたのだろう……。 「菜月さん……?気分はどう?」 奥様がいたわるように声をかけてくれた。 家元も気遣わしげにあたしを見守ってくれている。 「はい……」 大丈夫です、と続けたかったのに、かすれた小さな声しか出ず、自分で驚いた。 すぐに、白衣を着たお医者さんと看護士さんが来て、横になったままのあたしの脈を診てから、聴診器を当てた。 その間だけ、男性陣は慌てて後ろを向いていてくれた。 お医者さんは、いくつか質問をし、あたしはそれに首を振ったり、うなずいたりして答えた。 起き上がろうとしたけど、体に力が入らない。それを止められ、最後にお医者さんは熱を測ってから、みんなに向かって言った。 「もう、大丈夫でしょう。山は越えました。体力がだいぶ落ちていますからね。無理をさせないでください。とにかく休養と栄養が必要ですから」 気を張ってあたしを見守ってくれていた人々がみな、大きな安堵の息を吐いた。
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