第1章

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『記録では300年以上現れていなかった負の力であるマイナス数値を探知。 使用者を探すため急行したところ、現場は震度4の地震と、ショッピングセンターの窓ガラスが全て割れてしまったことで騒然としていた。 使用者と断定された少女は、母親の亡骸のそばで寄り添うように気を失っていたところを発見される。 目撃者の話によると、胸を押さえて突然倒れた母親に、少女がすがり付いて泣き叫んでいたという。 その後、窓ガラスが一斉に割れてしまい、強い地震がおこったのだと不思議そうに語ってくれた。 母の死のショックで少女は負の力を発してしまったと推測される。 正気道会員、井上孝史の娘と判明。竜神の会から守るため、その少女を護衛対象とした計画を練る』 智樹さんが言ったとおりに訂正されていた。 これが真実なのだと、その本は力強く活字で示していた。 「……いて、いいの……?」 あたしはうつむいたまま、つぶやいた。 声が震える。でも、恐いからじゃない。うれしくて、涙があふれてくるから。 「あたし、ここに……いてもいいの?」 思い切って顔をあげた。 そこには思ったとおり、暖かな人々の笑顔が待っていてくれた。 あたしの、大切な家族。 涙はどんどんあふれ出てくるのに、あたしは知らず知らずのうちに笑顔になっていた。 そばにいた奥様が、あたしを抱き寄せてくれる。 ここなんだ。ここがあたしのいる場所なんだ。 みんなの命の灯が暖かくあたしを包んでいる。そこは、とてもとても安心できる場所だった。
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