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このまま調子のいい日が続けば退院できると言われた日、あたしはめずらしく病室で一人になった。
いつも付き添いで誰かが側にいてくれたけど、もうなんでも一人でできるし、散歩くらいじゃバテることもなくなったから、ありがたいけど過保護すぎる付き添いは辞退したのだ。
みんな忙しいだろうに、複数の人員で構成された付き添いシフトを見たときは驚いた。
とても大切にしてもらっているんだと実感したけど、申し訳なさ過ぎる。
のんびりとベッドで体を起こしたまま、窓の外を眺めていた。
昼下がりの澄み切った青い空に、真っ白い雲が浮かんでいる。
開かれたその窓からは心地よい風が流れてきて、白いカーテンを揺らしていた。
「……智樹さん、こないかな……」
ふいに会いたくなって、つぶやくと、ドアをノックする音がした。
まさか、と思って返事をすると、姿を現したのは、本当に会いたかったその人だった。
「うそ……」
「なんだよ、その顔」
驚くあたしの顔を見て、不満げな表情をしてから、智樹さんは照れたように笑った。
「今日は誰もいないって聞いたからさ」
いままでは智樹さんが来てくれても必ず誰か付き添いの人がいた。
智樹さんに会えたのはとてもうれしいのに、今こうして部屋に二人っきりでいるのは妙に気恥ずかしかった。
たくさん言いたいことや話したいことがあったのに、いざこうしてみると、もじもじしてしまう。
少しの沈黙のあと、智樹さんが口を開いた。
「あのさ……」
そのとき、ドアを大きくノックする音がした。
あたしはなぜか、とてもびっくりして、ひっくり返った声で即座に「どうぞ!」と返事をした。
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