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「はあ、やっぱり駄目だったか……」
児玉紡希(コダマツムギ)は教室だというのに思わずため息をつきながらそんなことを呟く。
自分でも驚いて周りに聞こえていないか不安になるが、挙動不審に教室を見回しても誰もこちらを気にする者はいなかった。
どうやら聞かれてはいなかったようだ。
隣の席の友達は、トイレに行ったのか席を外していた。
授業の合間の休み時間。
皆たった10分しかない安らぎのひと時をできるだけ有意義に過ごそうと思い思いにふるまっている。
紡希はキョロキョロをやめると机に突っ伏した。
その行動もいつもの紡希に比べれば大胆な行動だったが当然誰もそれを気にする者はいなかった。
まあ、そうだよね。
当たり前だ。
そう簡単に選ばれるはずがないに決まってる。
自分への慰めの言葉を並べる。
紡希は小説を書く事が趣味だった。
そして、今さっき数か月前に初めて応募した小説大賞の結果を確認したところだった。
本来は家でゆっくりと落ち着いて結果を見るべきだったのかもしれない。
しかし、初めて応募した大賞。
気になって仕方なかった。
一次選考の結果発表はちょうど授業の最中だった。
朝から、いや、数日前からそわそわしていた紡希の心の中ははやる気持ちで飽和してしまっていた。
自分なんて選ばれない。
いや、そんなことはない。
選ばれないと思っていたら選ばれるものも選ばれなくなってしまうかもしれない。
いやいや、よく考えればあの表現はおかしかった。
だから駄目だ。
いや、でも、一次選考なら、もしかすると……。
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