~第十章 それぞれの世界へ~

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『娘が姿を消してから数年後。ヴィシオスが血まみれのウィンディを連れて城へやってきた。娘は息をしていなかった。衝撃で体が震えた。身動きが取れなかった。』 ライルが、解読された内容をネスに伝え続けているところだった。 本にはウルクの半生と愛する家族のことが書き綴られていた。 中盤から後半にかけてはウィンディが魔族と恋に落ちてしまったことが中心になっていた。そして、徐々に募っていく魔族への恨み。 ライルは更にその続きを話す。 『やっと帰ってきたのに。許さない、許さないぞ!!私は魔王城に全軍を挙げて攻めることに決めた。魔族に恨みを持った他国の人々も徐々に加わってきた。生きて城に帰ることができるか分からない。妻も娘もいなければ、私が生きている意味はない。死んでもいい。ウィンディ。必ずお前の仇を討つからな…。』 「この本は、ここで終わりです。歴史書によれば、ウルクはこの戦で命を落としています。その後も、戦が戦を呼び、たくさんの命が失われていきました。」 話を聞いていたネスの表情は暗かった。
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