夏からの手紙

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「着物は、嫌いなんじゃなかったっけ?」 「一年前、うさちゃんが見れなかったものを特別に見せてあげようと思っただけ。  今でも着物は大嫌い。  今日だけ特別なんだから!」  一度笑みが浮かんだら、後はそれをキープするだけだ。  難しくない。  制限時間は長くてもせいぜい四時間。  大丈夫、やり通せるはずだと春兎は自分に言いきかせる。 「……一年ぶり……いや、それ以上ぶりかな?」  自分が確かに笑みを浮かべていることを確かめてから、春兎は用意してきた台詞を口にした。 「本当に久しぶり……ともちゃん」  どこか遠くから、ドンッと腹に響く音が聞こえてくる。  春兎は、ともみの誘いを受けて、長良川花火大会に来ていた。
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