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愛する妻と子 妙と菜々子へ
二人共 お元気ですか
ご飯はちゃんと食べれてるかい
なっちゃんは今 どれくらい大きくなったのかな
僕は今 何とか生きているよ
でも元気とは言えないかな
ここでは食料や医薬品等色々な物が不足しています
傷病兵も数え切れないほどです
つい最近も若い兵士が亡くなりました
僕が看取ったんだ
彼の母親に替わり 僕がずっと寄り添い 抱きしめてあげていたんだ
彼は いつまでも お母さん お母さんと言って そのまま
でも 彼の事はもはや他人事ではありません
不思議に思うかもしれないけど
ここでは 自分の未来が解ってしまう
視えてしまうんだ
多分 僕も もうすぐ彼の様に
僕はね 今 凄く後悔しているんだ
ここに来た事じゃない
君達を守る事に繋がるなら どんな場所にも行ける
だからここに来た事は後悔していない
僕が後悔しているのは
君達が僕を送り出したあの日
あの時 別れ際に 君達を強く抱きしめ無かった事だ
あの時 もっともっと強く もっともっと長く 君達を抱きしめていればよかった
もう一度だけでもいい
二人の肌に触れたい
二人の肌の感触が 恋しい
二人の肌の暖かさが 恋しいよ
妙 ごめんね
もう 君を抱きしめる事は出来ない
なっちゃん ごめんね
パパはもう 君の頬に キスをしてあげられない
二人共 ごめんね
僕はもう
帰って来れない
妙 これから大変苦労するかも知れないけど 頑張って生きて欲しい
なっちゃんの事をよろしくお願いします
君達を愛してる
二人のお陰で 僕は本当に幸せだった
ありがとう
いつまでもずっと 愛しているよ
ごめんね
さよなら
吉原 春人
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