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「はっ?
バカも休み休み言いなさいよ。聞いてあきれるわ。智宏と向き合えなかったあなたが、他人と子供とうまくいく訳ないわ。
もしかして、罪滅ぼしのつもり?」
そう思われても仕方がない。本当のことだ。にしても10何年ぶりに聞く妻の剣幕はものすごい。
「どうでもいいわ。私たちにはもう関係ないことですもの。でもこれだけはいい、もう二度と電話してこないで」
わかったと言う前に電話が切れた。
あんなに口では怒っていたがたいして怒ってはいない。
「元気そうでよかった…」
これでやっと次に進める。俺は窓のカーテンを開き、窓を全開に開け放った。
開かずの部屋が片付いて、スッキリした気分で年末年初を春輝とゆっくり出来ると思っていたが甘かった。
「正月休みは里親の方へ帰省ですが」
電話の向こうで淡々と答える望月に俺は「なんでですかぁ!!」とほえてしまった。
「そう言われましても、お盆と年末年初は親御さんか里親の元へ帰れるようにしてます。…外出ですか?それは難しいですね。今回は成田山へ初詣に行くと報告がありまして」
何てことだ…。
すでに里親がついてるなんて…。
(そんなんじゃ俺が里親になっても望み薄じゃないか)
「吉越さん?やめるなんて思わないでください」
そんなこと言われても…。そりゃ~ねぇわ…。
ピンポーン。
その時、いいタイミングでチャイムが鳴った。
来客が来たからと。俺は携帯の通話を切り玄関のドアを開いた。
「春輝…」
「少し遅くなったけどメリクリ」
白い息をはきながら春輝ははにかむようにして笑った。
「おい、どうして来たんだ」
(もしかしてまた家出か?)
戸惑いつつも突然の訪問にまんざらでもない。
「クリスマス、おじさん淋しかっただろ?だからその埋め合わせに来た」
靴を脱ぎ、足早にリビングへと急ぐ春輝のあとを俺は追いかけた。
「おい、先生たちが心配するんじゃないのか!?」
「大丈夫大丈夫。そんなに長居はしないから。だからほら、ケーキ買ってきたからすぐに食べようぜ」
ブルゾンを脱いでダイニングチェアにかけて、コンビニの袋からモンブランのカップケーキをふたつ出して俺に見せた。
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