81人が本棚に入れています
本棚に追加
4年前から短期里親として預かっている、歩喜と歩望は一卵性児の双子兄弟で、ふたりより3才年下の護は去年から短期で預かり出した。ふたりとは別の児童養護施設である。
負けず嫌いな護とはよくケンカもするが、俺をいじめるときは驚異的な団結力で襲いかかってくる。
やはりそういうところは男の子同士馬が合うようだ。
うちが見えてきた。
今夜は護の入学祝いをすることになっている。
「かえったぞ~!」
護は元気よく玄関の扉を開くと同時に靴をぬいだ。
「おそいぞーまもるぅーーーー!」
バタンッ!バタバタ!!っと、リビングから飛び出してきた歩喜と歩望は、護を引っ張るようにしてリビングへとつれ戻る。
「おいこら~、ただいまだろう!歩喜、歩望はお帰りはどうしたぁ~!ちゃんとあいさつをしないか」
ひっくり返った護の靴をそろえてやりながら、俺は大声を張り上げる。
預かりるようになってから、あいさつには厳しくしているが、まともにあいさつを聞いたことがない。
しまいには、
「足クサいおっちゃんは洗ってからこっちこいよ~」
と、からかう始末だ…。
「たぁーく…。なんなんだよあいつらは~」
あきれて思わずため息がこぼれる。
「おかえりなさい宏さん」
そんな俺の様子に笑いながら出迎えてくれたその子は、高校の受験を期に疎遠になって、でも高校を卒業して、愛園福祉寮も卒寮してから俺に会いに来てくれた…。
『俺が寮を出たら一緒にディズニーランドに行こうって約束、覚えてるだろ?』
そう開口一番に言われたっけな。
「ただいま春輝」
(忘れるわけないじゃないか…)
「準備は出来てる。歩喜と歩望が張り切って飾り付けしたからほめてあげてね」
「ガッテン!春輝もあとは俺にまかせろ」
あの頃のようにキラキラな金髪じゃなくなった春輝の髪をなでてやる。
そうしたときの、はにかんだ笑顔が愛しく可愛い。
そんな愛しくて可愛いその子の唇に俺は軽くキスをする。
「おーい、おっちゃーん!はるきぃー!イチャついてないで早くこいよ~」
ごちそうを前におあずけをくらっている今夜の主役、護の言葉に俺たちはあわてて子供たちのもとへと急いだ。
終わり。
最初のコメントを投稿しよう!