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遥かに広がる赤い荒野は、沸き上がる砂塵で一面霞んでいた。
無数の喚声と馬蹄の音が、地鳴りとなって辺りを震わせた。
曇天で辺りは薄暗く、夕方が迫るに連れて雲はさらに厚くなっていく。
高台から見下ろす戦場は、両軍入り乱れての混戦であった。
騎馬や歩兵、弩弓の部隊が、縦横無尽に走ってはぶつかり、砂塵に消える。
「見ろ、左側、東側だな、あの後方に赤い甲冑の一団があるだろう。
あれがドルザーグの本隊だ」
高台の茂みにいるのは、わずか五十騎。
装いもまちまちで、ごろつき集団といった風の一団だった。
先頭にいるのは、背がすらりと高く長い黒髪で、鷹のような鋭い眼をした、野性的で美しい若者。
その全身から猛烈な殺気がみなぎっている。
肌は浅黒く、しなやかで引き締まっている。
傍らには、イノシシのような巨躯の男。
短く刈り上げた髪型で、空洞のように黒く表情のない眼をしている。
「穫るぜぇ野郎ども」
凶悪な笑みを浮かべる鷹の目の男は、腰の剣を抜き、
「続けぇ!」
と激しく号令した。
茂みを抜け、砂塵の立ちこめる戦場へ、赤い甲冑の一団へ向け、五十騎は矢のように駆け下りた。
決してなだらかな丘ではない。
崖に近い。だが彼らは、平地を行くように突き進んだ。
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