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僕は分厚い鉄の扉を開けて研究室へとーーーー
入りました。
足の踏み場もないくらいに実験道具や科学の資料が床へと乱雑に置かれ、所々にある机の上では怪しげな薬品を注いだビーカーが火にかけられています。
僕は持ってきた資料を、大事に両手で抱えながら、
「博士、何処ですかーーー?」
と言いました。しかし返事はありません。
とりあえずは慎重に部屋の奥へと行くことにしました。進むにつれて鼻の中へツーンとした薬品の臭いがしてきます。僕は実験道具や資料の隙間に足を入れながら、しばらく歩いていました。やがて山のように物が積まれた場所にやってくると、声が聞こえてきたのです。
「ふふふ、後少しで完成だ。」
それは、ひどく酒焼けしているが女の声でした。間違いなく博士の声です。
「博士、いるなら返事をしてください。」
僕は声をかけて、山の裏側を覗きこみました。すると上等な皮の椅子が埋もれるようにあり、そこへ深く腰掛けている博士がいました。
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