変身

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 「パワードスーツですか?」  「かなり高度な技術でね、君に持ってきてもらった資料もその為なのだよ。」  「え、でもあれは人間の認識を誤魔化すことが書いてある研究資料ですよ。」  「そう、これを作るにはそれが必要なのだよ。」  博士は机の上から、設計図を手にして僕に見せる。そこにはーーーー  「この目の部分が空いた顔の上半分を隠すヘルメットと、トランシーバー機能を備えた鳥形のバッチに、空を飛ぶマント。これがあれば、百万倍のパワーを身に付けられるのさ。」  その話を聞いた途端に、僕の周りの空気が凍りついた気がした。  「は、博士。僕はそのパワードスーツを子供の頃にテレビで見たことあるのですが。」  「ちなみに、装着する時はパーチャ…」  間違いない、テレビで見たやつだ。  「駄目ですよ!!何を作ろうとしてるんですか。」  「科学の進歩とは、夢や憧れを実現させようとすることが原動力となっているだよ。私も子供の頃の漫画に出てくるメカを作ろうとして科学者になったんだから。」  博士は嬉々として、それらしい理由を並べている。その気持ちも解らなくない。  「では、僕がチンパンジーになったのも、そんな理由があるんですね。」
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