大人の塔に行く

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 棚から小さなピンクの楕円の玉のついたのを見て、首を傾げると棚に戻した。ほっとしたのも束の間、隣の、玉が二つのを取り出した。 「ちょっ……な、そんなのいらないだろう……」  迅の服を引っ張ると、振り向いた迅にひそひそと囁いた。 「そう?」  迅がオレの顔を見てにこりと笑うと、箱を重ねてレジに向かって歩いて行く。 「お、オレが出す……」  財布を取り出す間もなく、迅が支払いをしてしまった。  がさがさと店員が商品を袋に詰めている。ああ、ちゃんと中身がわからないように梱包してくれるんだとか、袋とかも店の名前ないんだなとか、変なことに関心してしまう。 「いこ?」  こんな場所で言い争う度胸もなかったから、迅の後に黙って着いて行った。エレベーターのボタンを迅の綺麗な指が押す。黙ったままの迅に、もしかして怒っているのかと不安になった。 「迅……」 「こういう所はさ、カメラとかついてるから。後でね」  オレの顔を見た迅が微笑む。 「ああ、怒ってないよ」  一瞥しただけで、オレの考えている事がわかってしまうのか。  そんなに解りやすいのか、そう思うとなんだか落ち込んでしまう。
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