大人の塔に行く

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 が、案の定、売り場にやって来てもだもだと悩み、そういえば、迅は甘党じゃないから、クッキーやホワイトチョコレートなど喜ぶわけがないと気がついた。  それに売り場には案外女の人が多くて、旦那さんや恋人に頼まれたのだろうか、沢山のお菓子を抱えていたり、カップルで楽しそうにお菓子を選んでいたりして、その姿になんだか気後れしてしまったのだ。  それならばと、百貨店の中を巡り、何か迅に似合うようなもの……とあれこれ見て回ったのだが、十歳も歳が離れているからオレとはセンスが違うのだろうなとか、そもそも、いつも洒落た格好をしている迅に対して、オレは格好まで平々凡々としていて、オレのセンスじゃ喜ばせてやることなんか無理なんだと思ったりして。  それでも、きっと迅は喜んでくれるのだ。  似合っていようがいまいが、身に着けてくれるのだろう。迅はオレにすごく甘い。自分で言うのもなんなのだが、ベタ惚れというか、ちょっともうすぐ四十のおっさんに対して、それはどうなんだと思うぐらいにアレで…………。  そんな迅がダサいおっさんセンスのものを身に付けているってことが、自分の存在を主張してるように見えるんじゃないかって、不安になってしまったのだ。
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