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四月二七日、静岡県御殿場市、駅から出てきた一人の少女がPSPを持ちながら歩いていく。器用に指を動かし、目線はゲーム画面なのに前方から来た人とぶつかりそうになったらするりと抜ける様に避ける。
橙色の髪色でロングヘアーに小さなお団子を足した髪型をしている、琴原梓沙は私立高校である誠才学園を目指して登校している。
するとそんな彼女を後ろから呼ぶ声が聞こえた。だがイヤホンをしている為、梓沙には届かなかった。何時もの事だ、と無視されている事を慣れている声主は、もう一度声を掛けて梓沙の肩に手を置いた。それには流石に気がついた彼女は、イヤホンを耳から抜き取った。
「・・・あ、亜季。・・・おはよう」
「あぁ、おはよう」
無表情で挨拶をする梓沙。それが彼女だと知っている神田亜季は、きちんと返す。
亜季も梓沙と同じ高校を目指している。彼は普通科蛍雪コースの奨学金で受かっている。他には被服科や普通科の特別進学、商業、そして梓沙が入る事になっている国英コースがある。
「お前、またゲームやってるのか? 入学二日目から今日一週間、ずっとやってるよな」
「・・・だって・・・最近買ったばかりだから」
あまり理由になってはいないが、そこは敢えて突っ込まない事にした。
誠才学園の規則では、ゲームなど学業に必要のない物は持ってきてはいけない。だが、彼女は特別なのだ。
「・・・大丈夫。・・・叔父さんが・・・許してくれた」
「そんなんでいいのかよ」
そう、梓沙の叔父は誠才学園の学園長なのだ。孫に甘い彼は、直ぐに承諾してくれた。
だが他の人にはバレてはいけないと自分でも判っているのか、高校が近くになってきたらゲームの電源を切った。それと同時に「待ってー!」と女子らしい女子の声が元気よく聞こえた。
亜季は無視しようとしたが、梓沙は振り返る。その瞬間、彼女の顔が声主の胸に埋まる。
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