第1章 花姫の母上の願い

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 良幸は 下り坂は楽だと思った。でも道は やはりナナメに 遠回りだ。良幸は また近道を考えた。 「草すべりみたいに まっすぐおりた方が早くない?」 「どうするのじゃ?」  バカなやつは バカな事を思いつく。 「手押し車の上に乗れば すごく早く 楽~に下におりれるよ」 「なるほど それは良い」  良幸は木が無くて 下まで草の所をさがす。 「ここならすべれそう」車のスピードは考え無かった。  花姫が 手押し車に乗ると 良幸は 「行くよー。しっかりつかまって」と 後ろ足をけって前に出る。  手押し車は ガラガラと音を立て 下へおりた。 「わー」花姫もスリルを楽しむ。  良幸は初め小走りだが、手押し車がだんだんスピードを増し、足がついていけなくなった。宝物は重く 手押し車は止まらない。良幸の足は引きずられ、取っ手に乗って 足を浮かせた。   スピードはどんどん上がり、落ちるように早くなった。  こわさのあまり花姫も良幸も手押し車にしがみつき 「ギャアアアアアー」とさけぶ。  悲鳴で 目ざめた父上は下を見ておどろいた!  2人の乗った手おし車はすごいスピードで落ちていく。 「ガン!」車は大きな岩に当たり、飛んで方向を変えた。  2人は手を放し、手おし車から勢いよく投げ飛ばされた。 「ウワ~ッ」転がり落ちる良幸。 「キャア~ッ」宙に浮く花姫。  車は岩にガンゴン当たり、飛んで落ちた。乗っていたら死んでもおかしくない。    バカなことを考えた良幸に 父上も怒りまくり 「あのガキ~!」と 追いかける。  幸い良幸は 転がって、草花のしげみで止まった。 「姫 だいじょうぶ?」 「平気よ」  花姫が空中からおりたので 良幸は安心して 「待て―」と 手おし車を追いかける。 「待って―」花姫も 良幸の後を追う。  車は速く、良幸との間はどんどん広がっていった。
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