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花姫は話をそらし 父に甘え声で言う。
「それより父上、姫はごほうびに 栄町(さかえまち)のお祭りに行きたいです」
戦国時代はあまり お祭りをやらなかったのですが、お殿様は できるだけ戦争をさけ、周りの国と協力しあい、栄町も少しおちついていたのです。
「よしよし護衛(ごえい)つきでなら」と 父上が条件をつける。
「彼といっしょに行っては いけませんか?」
花姫が良幸を指さしたので 良幸はドキッとする。
父上は うでを組み 良幸をにらむ。
「かまわんが。たよりなさそうな子じゃな」
「いや、ボクはもう帰らなくちゃ」
良幸は首をふり 父上の言い付けにそむく。
「なにー、逃げるのか?姫の願いはわしの願いじゃ。命令じゃ、行け!」
「え~っ」
「もどってきたら、ほうびを取らす。しかし もし姫に何かあったら そちは打ち首じゃ。それでよいな」
なんてかってな父親だ!
良幸は『やなおっさん。でも幽霊に打ち首されても 死なないも~ん』と思い、口をとがらせて言う。
「べつにいいけど ほうびなんて・・・」
父上は怒って 良幸をさえぎる。
「べつにいいけど?・・・恐くないのか?なまいきな子じゃな。言葉もなっとらん!」
父上のどなり声は そばの井戸にもひびいた。
父上の怒りを止めるように 母上が井戸から顔を出す。
「待たれよ!」
「何じゃ、奥方」
「私は 地ごくからぬけ出したい。この井戸から外へ出たいのです」
「まこと 出られぬとは気の毒にのう」
母上を愛する父上は残念がる。
「それでお願いが・・・」
「いつも ろくなもんじゃないが。今度は何じゃ?」
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