第1章 花姫の母上の願い

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 花姫は話をそらし 父に甘え声で言う。 「それより父上、姫はごほうびに 栄町(さかえまち)のお祭りに行きたいです」  戦国時代はあまり お祭りをやらなかったのですが、お殿様は できるだけ戦争をさけ、周りの国と協力しあい、栄町も少しおちついていたのです。 「よしよし護衛(ごえい)つきでなら」と 父上が条件をつける。 「彼といっしょに行っては いけませんか?」  花姫が良幸を指さしたので 良幸はドキッとする。  父上は うでを組み 良幸をにらむ。 「かまわんが。たよりなさそうな子じゃな」  「いや、ボクはもう帰らなくちゃ」  良幸は首をふり 父上の言い付けにそむく。 「なにー、逃げるのか?姫の願いはわしの願いじゃ。命令じゃ、行け!」 「え~っ」 「もどってきたら、ほうびを取らす。しかし もし姫に何かあったら そちは打ち首じゃ。それでよいな」  なんてかってな父親だ!  良幸は『やなおっさん。でも幽霊に打ち首されても 死なないも~ん』と思い、口をとがらせて言う。 「べつにいいけど ほうびなんて・・・」  父上は怒って 良幸をさえぎる。 「べつにいいけど?・・・恐くないのか?なまいきな子じゃな。言葉もなっとらん!」  父上のどなり声は そばの井戸にもひびいた。    父上の怒りを止めるように 母上が井戸から顔を出す。 「待たれよ!」 「何じゃ、奥方」 「私は 地ごくからぬけ出したい。この井戸から外へ出たいのです」 「まこと 出られぬとは気の毒にのう」  母上を愛する父上は残念がる。 「それでお願いが・・・」 「いつも ろくなもんじゃないが。今度は何じゃ?」
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