第1章 花姫の母上の願い

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 母上は紙とカギの説明をする。 「それが金銀財宝をかくした地図と 宝箱のカギじゃ。宝箱を見つけて 税金のかわりに 町民に返しておくれ。民の暮らしが楽になろう。そして少しでも私を天国に近づけておくれ」 「はい」 良幸と花姫は 母の気持ちが分かり うなずいた。  父上は良幸ににらみをきかす。 「宝物をぬすんだら 打ち首じゃぞ」 「父上 良幸さまはそんなことしません!」  母上は子どもを信じて願う。 「行ってくれるか?私もここから出て 家族ををだきしめたいのじゃ」 「はい。それなら 行きます」良幸が元気に答える。  父上はアドバイス。 「どうやって宝を返すか考えて ちゃんとほうびも考えろよ」 「はーい。ほうびは百点のテストがいいかな。親は取れっこないっていうから 見返したい」と付け足した。  父上は聞いてあきれた。 「試験の満点のことか?取ったことないのか。頭の悪い坊主だな」  確かに頭は良くない。百点も もう2年ほど取ってない・・・  父上はため息をついて 「もっとましな願いがあるだろ。たよりないやつにたのんだのう」  確かに良幸は家でも たよりないやつだから しょうがない。  でも母上は良幸をかばう。 「まだ欲もないのよ。純粋なのね。それに比べて 私ったら まだかくし金も残っていたわ。ほほほ。大人は欲張り。この子でなきゃ頼めぬ」  それから母上は金貨いっぱいのきんちゃく袋を ふところから出して 花姫に言う。 「花姫 これも町民に返しておくれ。黒泉家の名誉のため 私と知られぬようにな」  まだあったなんて!父上もあきれて 「全部出さないと 井戸から出られんぞ」と きんちゃく袋をひったくり 花姫に渡す。  花姫は金貨の入った袋を受け取り 「母上 預かりました。これは町民にお返しします」と おじぎし「早う井戸から出られますように」と 願う。  花姫も母の手に抱かれたかった。
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