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日本の夏はハワイに負けず劣らず暑い。
空港を出て高速バスの乗り場に向かう足取りは重く、心無しかアスファルトの地面に吸い付くように感じる。
「はぁ…どうしてこんな事になるのよ…パパもママも酷い…」
僅かに肌を通る風に、黒いウェーブのかかった長い髪が靡く。
あたしの名前はマヒナ。
黒い髪と黒い瞳はママ譲り。
鼻筋の通った幼顔。
身長は150センチ。体重は秘密。
どちらかと言うと細身かな。
因みにマヒナはハワイで月と言う意味。
とても素敵な名前。月明かりみたいに闇を照らすような明るい子になれって名付けたそうだ。
そんな名前に完全に負けてるあたしは極度の人見知りで内気な性格。それを鍛え治そうとパパとママが日本のお祖母ちゃん家にあたしを預けたって訳。遠く離れた国で強くなれって…ドラマや漫画じゃあるまいし…何考えてるのかパパもママも信じらんない!
お祖母ちゃんは日本人であるママのお母さん。
パパがポリネシア人だから、あたしはハーフって事になるのかな。
可愛い子には旅をさせろって諺が日本にあるらしく、今の状況が正にそれだ。
本当にあたしを可愛いと思ってるのか疑問に感じるこの仕打ち…
お祖母ちゃん家は東京から高速バスで2時間半くらいの海沿いの町にあるってママが言ってた。
海が近いのは嬉しいけど、初めての日本。
不安だらけだわ。
「よいしょっ…」
大きめのボストンバッグを肩にしょい直し、あたしは高速バスの乗り場に足を進めた。
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