始まり

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高速バスを降りて更に路線バスに乗る。 疲れはピークに達していた。 「あたしの降りるバス停は…」 半袖のパーカーのポケットから出したバス停のメモを確認。 バスの前方にある停留所表示と照らし合わせると、まだ長旅であるのが分かった。 高速バスの中で少し睡眠は取れたけど眠気は残っている。 あたしは眠気覚ましに窓から町の景色を眺める。 空はまだ明るい。時計は午後5時を差していた。 ふと大きな建物が目に入った。 「多目的施設かな?」 広い敷地に建つ4階建ての施設。 きっとイベントに使われるのだろう。 その通りを3人の女子高生が制服姿で楽しそうにお喋りしながら歩いている。 「友達かぁ…」 溜め息ひとつ。 ううん!羨ましくなんかない! 自分に言い聞かせるように心で呟いた。 あんな光景を見ると卑屈になってしまう。 こんな自分は嫌い。 あたしはもう景色を見る事なく、目的地のバス停まで寝たふりをする事に決めた。 どのくらい時間が過ぎただろう。 狸寝入りどころか本当に寝てしまってた。 「いけない!」 焦るあたし。 慌てて通過するバス停を見る。 「良かったぁ」 表示を見ると目的地の手前だった。 安堵と共にバスを降り、お祖母ちゃん家までの地図が 書かれたメモを取り出した。 大通りから狭い道に進むと、古い民家が並んでいる。 新興住宅地と比べると華やかさは無いけど、何だか落ち着く景色。 仄かに潮の香りが鼻腔を刺激した。 「海だ!」 あたしは思わず叫んだ。 民家の間から見えた海は白い波を立てて力強く音を奏でる。 あたしはまた家を思いだし少し涙ぐんだ。
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