ストレイ・シープ

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ガタンと眺めていたページの文字群が一斉にぶれてまた輪郭を取り戻す。 さあ、着いた。 私は教科書をカバンに収める。 元より二駅しか乗らないわけだが、心なしか今日はいつもよりいっそう早く着いた気がする。 ドアの外に出ると思ったより肌寒く、湿った匂いがした。 灰色の空模様からすると、降り出しそうだ。 多分、教室に着くまでには降らないだろうと思いつつ、足を急がせる。 何だかんだ言って、すぐ近くの大学に通えるのは得だ。 本当は遠くで一人暮らししてみたい気持ちがなかったわけではないが、家から二駅目が通学先になったし、そもそもそこがずっと第一志望だったから、自分としても箱入り娘コースを選んだわけだ。 まあ、どのみち……。
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