スケープゴート

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「あ、おはよう」 思わぬ相手に会った時、反射的に笑顔を作れるようになったのはいつからだろう。 「私、今日一限からだから早いんだ」 まず、自分の情報から開示してみる。 「そう」 相手はろくに目を合わせもせず、さっさとホームの階段を早足で上がっていく。 真っ直ぐな黒髪を短く切り揃えた小さな頭がどんどん遠ざかる。 ――お前のスケジュールになんか興味はない。 そう言われた気がした。 あーあ、「おはよう」だけで終わらせておけば良かった。 博史(ひろし)がああなのは、今に始まったことではないし。
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