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能登(のと)博史は、ごく一時期を除いて、小さい頃から向かいの家に住んでいる、私の幼馴染だ。
だが、「幼馴染」という言葉から一般に連想されるようなロマンチックな関係にあったことはこれまでに一度もない。
というより、今となっては、「幼馴染」と呼ぶことにためらいを覚えるほど疎遠な間柄だ。
こんな風に人目がないところでは挨拶も返さないくらいだから、彼から嫌われているのだと嫌でも判断せざるを得ない。
率直に言って、私も今の博史は苦手だ。
中三の夏にご両親の離婚で一度、引っ越す前までは、口数は少なくても、話しかければ笑顔で返してくれるような気持ちの優しい男の子だった。
しかし、高二の秋にお母さんが亡くなってまた元の家に戻ってきた時には、その寡黙さはどことなく偏屈で拒絶的な匂いのするものに変わっていた。
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