終章

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はる姉に必要とされて、結果、彼女が幸せになれたのなら、こんなに嬉しいことはない。 やっぱオレもドMか。 「はー。でも、まだ実感わけへんな。はる姉はもう人妻なんすよね」 「ええ」 「オレたち、もう南晴奈には会えないんすね」 「どのみち、もう中瀬さんですしね」 「あ。そっか」 現実は結構キツイ。 「……きっとすぐに忘れますよ」 「そんなすぐには無理っすよ」 今さら強がるなよって思ったけど、次の安西さんの言葉にハッとした。 「忘れたいことは憶えてて、忘れたくないことほど忘れてしまうんですよね人間って」 そう言った安西さんの瞳には、うっすらと涙が滲んでいて、こっちまでもらい泣きしそうになった。 失礼な言い方かもしれないけど、この男には悲しみがよく似合う。 不幸や悲哀によって、彼の魅力が引き立っているようにさえ感じる。 しかし、大衆的な居酒屋で膝を付き合わせ、大の男二人が涙目なんてマジでウケる。 オレたちは、そのまま夜更けまで飲んだ。
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