第1章

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「その二、真里谷の家に俺も住む。寺の跡取りは一穂だし、問題ない」 「それは、真里谷の了解も必要なのでは?」  御形を巻き込むということは、考えていなかった。 「真里谷は、どちらでもいいってさ」  いつの間に、真里谷と御形は仲良くなっていたのだろうか。 「その一でも、いいのか?」  そっと呟いてみる。 「歓迎する!」  御形の家は下宿屋ではない、でも、真里谷の学校には、むしろ近くなるかもしれない。 「それでは、まとめに入るか…」  福島の傍にそっと近寄る。お腹の子供は、先に成仏していたらしい。 「福島さん、これから実体化が切れます。実体化が切れる際に、又死が訪れます。光に向かって自力で歩いていってください」  福島が、笑顔で頷く。 「はい、ありがとうございます。最後に、見明君に会えて幸せでした。それに、あの子が迎えに来ています」  これは初めての現象だったが、成仏した子供が母を迎えにきた。そして、親子三人で出会ってしまった。  少しだけ灰を飛ばし、赤ん坊を実体化した。手のひらサイズの小さな赤ん坊だったが、にこにこと幸せそうに光っていた。 「名前付けたかったよ…」  見明が、赤ん坊を抱きしめた。 「千尋よ。男の子でも女の子でも、そう付けようと思っていた…」  両手を広げる赤ん坊、性別は分からないが、どちらでも、両親は待っていたよ。 「千尋…」  光が消える。周囲は、暗くなっていた。 「成仏したか?」  御形が頷く。本当に良かった。 「…ヘブンズゲームで、願いを叶えたのは、私だけかもしれませんね…」  見明の笑顔から、影が消えていた。 「福島は、俺に新しい相手を見つけて、結婚しろと言ってくれました。生まれ変わりがあるのなら、自分が再び出会うために、未来を繋いでいて欲しいからとね、と。福島らしい言葉です」  見明は、何度も礼を言うと去って行った。 「さてと、本当の最後だ」  何故、光の先に進むのか。光の先にあるものは何だ。この光を司る天使が、俺達の親友だった。  直哉に言わせると、俺は生まれた時から光に愛されていて、当然のように、光の天使が俺に惹かれたそうだ。 「おい、見ていたならば、力、回収していけ」  光のある場所ならば、あいつは全て把握できる。 『分かった』  真里谷から、俺から、光の筋が現れ、空中へと消えて行った。
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