第1章

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 俺達は、経緯は分からないが、垣間見えた未来では大学生のようで、今のようにつるんで事件を追っていたと、がっかりした未来を言ってくれた。かろうじて二年以上先なので、未確定情報としておくことにした。  本当に、当てにもならない未来である事を祈る。事件には係らないでいようと、昨日直哉に言われたばかりだった。  真里谷と、見明の携帯電話が同時に鳴った。 「見つかった」  見明が携帯電話を握り締めて、泣いていた。 「それでは、最後の」  仕上げと言おうとして固まった。このメンバー、誰も霊を見えない。多分、見明の近くに福島が来ている。 「だから、俺が必要だろ?真里谷が、俺にも情報を流してくれた」  後ろから現れた御形が、福島の居る位置を手で示し教えてくれた。  灰を媒体に、霊を実体化する。次第に姿を現した福島に、冷静だった見明も動揺していた。 「君たちの映像か?イタズラだったら許さないよ」  俺は、首を振る。もう少し灰を足して、喋れるまでに、実体化する。 「どうして、いつも、信じられないの。いくら人の心が分かると言っても、貴方、人間がわからないのよ」  怒った時の彼女の口癖だったらしい。見明が固まっていた。 「私ね、妊娠しているかもなと思ったけど、山に登ってしまった。山から降りたら、見明君にも言おうと思っていた」  でも、下山途中で腹部が痛くなり、捻挫と偽ってその場に留まった。すごく後悔して、生きて子供を産みたいと思った。  体調が良くなったので、一人でも下山しようと思ったが、足がふら付きどこかに落ちた。 「空だけが見えていた。悪天候が嘘のように明るくて、真っ青な空だった。ごめんねと呟いたら、涙が出た。見明君とこの子にごめん」  そこからの記憶はないそうだ。 「俺こそごめん。お互い、警察官になったら結婚しようと約束したのに、仕事が一人前になってからとか、色々言ってしまって」  逃げていたと、本人が理解したときには、失っていた。  互いに抱き合って泣いていた。暫くそっとしておこう。 「なあ、黒井。解決策を授けるよ」  御形の分のイスが無かったので、御形は俺のイスの半分を取った。 「何の?」  御形が、立ち上がり、上から俺を見た。 「その一、真里谷も御形に住む。親には頭脳明晰だけど問題児を、もう一人住まわせてもいいか?と聞いて了解を得ている。受験勉強を一緒にするのが条件だけど」  御形の家が崩壊しそうだ。
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