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堕天使様はホール奥にあるエレベーターの前で立ち止まると、後方を歩いていた俺をちょいちょいっと手招きする。
なにあの堕天使。
立ち姿からフェロモン出てますし。
スタイル良過ぎですしおすし。
「エレベーターの使い方を教えてやる。
蒼井、学生証を持って………お手。」
艶やかな低音と。
差し出される、白い左手。
堕天使様に洗脳されたみたいに、反射的に学生証を握っていた右手をポンっとそこに重ねてしまった。
まさに、華麗なるお手。
俺氏わんわんおー\(^o^)/
「……良く出来ました」
ご褒美とばかりにふわりと笑って、頭を撫でて下さる堕天使様。
やっべ、間近で見るイケメンの破壊力パないわー(棒読み)
俺の手を包むように重ねた堕天使様は、エレベーターの昇降ボタンの横にある小さなリーダーに、俺の学生証をスライドさせる。
リーダーに青色の光が点(トモ)ると、どうやら上の階にいたらしいエレベーターが、下降を始めたモーター音が微かに聞こえ始めた。
「こうすると、エレベーターを呼べる。
後は乗り込んでから階数を指定するだけだ」
耳元で聴こえる、艶やかな低音。
右手に感じる、低めの体温。
…
……「体温」?
ソレに気付いた瞬間。
腹の底がスッと、冷えた気がした。
俺の右に居るのは。
声を持ち、体温を持つ『賀茂川要』という一人の男。
2次元じゃない。
ゲームのキャラクターじゃない。
………生身の、人間だ。
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