384人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
公園から漏れる街灯は、淡く。
雲で見え隠れする月は、夜に突き刺すナイフの様に鋭く。
夜に浮かぶ幹太のシルエットは、私に重なり、 ――夜から私を隠してしまった。
「――桔梗」
スルスルと、繊細に幹太の指が動く。ゆっくり 、輪郭を描く様になぞるのは、――私の薬指に輝く指輪。
幹太は何度も何度も、優しい手つきで指輪の輪郭をなぞった。
「俺が、言えばお前は困る癖に」
「え?」
「俺は、――ずっと言わない。言えるわけないんだ」
悲痛な、痛々しい声。顔を、見たい。見ては、 いけない。
――見上げても、淡い夜の輝きは、上手に幹太の表情を隠した。
最初のコメントを投稿しよう!