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「お電話変わりました、私は先ほどのものの娘です。もう一度お話を聞かせていただけますか?」
オペレーターのお姉さんは安心したように説明を繰り返した。
「追加証拠金やFXについてはわかりました。でも私たちはそちらに登録していませんし、FXもやっていません」
きっぱりとそれでいて丁寧に答えた。
「確かにそちらの゛ナナシノゴンベイ゛様の口座からFXの口座へ入金があり、取引をされていますので…」
「ちょっと待って!口座が゛ナナシノゴンベイ゛になってるの?」
頭が混乱してきた。携帯の名義は゛ナナシノゴンベイ゛だが、口座はカグヤ名義の筈だ。
「口座名義は゛ナナシノゴンベイ゛なんですか?カグヤじゃなくて」
「はい。カグヤ様という名義ではありません」
゛ナナシノゴンベイ゛と言う名義はマネージャーが持ってきた携帯の名義と同じ名前。
きな臭くなってきた。
「そこへはどうやって登録したのじゃ?」
驚きと興奮でいつものしゃべり方に戻っていた。
「携帯からの仮登録のあと、お住まいの住所へ登録用紙を送らせていただいております」
「その住所は、たけのこの里 1-23 竹取の翁宅ではないか?」
「はい。そちらの住所で登録されております」
決定だ。マネージャーが犯人だ。
でも、音信不通で住所も知らない。名前も知らない。よくあんな人間を信じていたなと今更ながら自分たちのお人好しぶりに落胆する。
「その取引をした人間はわかりました。でも、今どこにいるか分かりません。私たちは被害者です」
「少々お待ち下さい」そう言って音楽が流れ出した。
これで払わなくてもいいのか?いや、マネージャーを捕まえないと無理だろう。カグヤの顔に不安の色が広がった。
「お待たせしました、わたくしコールセンターの管理者の築山と申します。内容は先ほどのオペレーターより聞いておりますが、確認のためいくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」
落ちついた渋い声、ピシッとスーツを着た黒髪短髪筋肉質かなオジ様のイメージが浮かんだ。
「まずあなたがたの中に゛ナナシノゴンベイ゛様はいらっしゃらないのですね?」
「はい」
「取引をした人間はわかるけれど、どこにいるかわからないと」
「はい」
「登録して取引したのもその人だと」
「はい」
「う~ん」
しばらくうなり声を上げ
「お客様のご事情は理解できました」
良かった、これで万事解決だと喜んだのもつかの間
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