第1章

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ピースサインをこちらに向けて笑みを浮かべている中年の女性であった。 「おい!なんだこいつは!俺にはBBA(ババア)がお似合いってことか?」 眉間にしわを寄せ、眼孔はするどくなり、首筋の血管が浮き出ていた。 胡座をかいていた足は片膝を立てて、右手には写真をかかげて執事の眼前にこれでもかと押し付ける。 「し、失礼しました。この写真は家内のものでした」 そそくさと写真を王子の手から取り上げ、胸ポケットにしまいこんだ。 嫌な空気が流れる。 王子は足を胡座に戻し、ブスッとした顔で手の平を上に向け、指をクイクイと曲げ写真を見せろと促す。 今度は間違えないように、一度確認してから王子へ渡した。 先ほどの顔がまだ残った状態で写真を見るはめになったため、やや落胆している。 「どうせ、さっきの写真の女みたいに小太りなんじゃねーの。昔の人間は太っている方が健康的で、裕福の象徴だとか思っているんだろうが、俺はそうは思わん」 モチベーションだだ下がりの状態で写真を表返した。 そこに飛び込んできた一人の女性。 何故か隠しカメラで撮影したかのような位置で撮られており、ピントもわずかにズレている。 しかし、それを差し引いても、彼女は美しかった。 腐っても鯛? 豚に真珠? 猫に小判? 何か高そうなモノで例えようとするが、うまく出てこない。 もう少し、ちゃんと勉強しておけば良かったと後悔しながらも 『高嶺の花』 多分これだろうと納得していた。 「おい!この女はどこの誰だ」 さっき名前を教えたのに、こいつは馬鹿かと思っていたがとりあえず胸の奥にしまい、もう一度教える。 「カグヤでございます。たけのこの里と呼ばれる小さな村に住んでおります」 「カグヤ…カグヤか」 ニヤニヤしながら名前を連呼するその姿は現代の『HENTAI』を彷彿させる怪しさと卑しさが醸し出されていた。 「王子、もしこの者を気に入られたのでしたら早速祝言の準備に取りかかってよろしくでしょうか?」 祝言を挙げたら結婚、夫婦、そしたら… 「うわぁぁぁぁっああ」 両手で顔を覆い隠しゴロゴロと転がりながら、足をばたつかせている。 耳を真っ赤に染め、まだ叫んでいる。 若干気持ち悪いリアクションだが、この国の発展のためには妃は必要不可欠だからだ。
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