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この国は周りに五つある国の中で一番領土も狭く、国力もそれほど強くない。何故周りの国が攻めてこないのかというと、ひとえに王の強さである。
この国の王族はある特殊な体質で『一鬼闘殲(いっきとうせん』という能力を持つ。
その能力は自身を鬼と化し《鋼の肉体》《100万馬力のパワー》《底無しの体力》とほぼ無敵と思われる力を手に入れる。
いくら、何万という兵がいても彼の前では何の意味もない。
ただひとつ、この能力には条件があり『本気で愛する人と結ばれる』というものである。
よって、今の王子には何の力もない。
もし現国王になにかあった場合、王子は何もできないため、すぐに滅ぼされてしまう。
王子の結婚はまさしく国の命運を握っているのである。
「では、この者と挙式の準備を…」
最後まで言い終わる前に口を挟む。
「ちょっと待て!カグヤに会いに行く」
立ち上がり、腕を振り上げて高らかに宣言する。
「会いに、ですか?」
困ったような顔で聞き返す。
「一度会って、声を聞いた方がいいんじゃないか?変な声だったら嫌だし」
片思い中の中二男子並みに目が血走っている。
どストライクすぎて気持ちが高ぶっているようだ。
「わかりました。そこまで本気なのですね」
念を押すように繰り返す。
「たけのこの里までは険しい道のりですがよろしいですか」
黙ってうなずく王子。
これは本気だと執事は確信し、旅の準備を始めた。
それから三日後、もろもろの手続きを終えた王子一行はたけのこの里へと出発した。
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