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この事実に人々は皆驚いていた。
かつての難攻不落の国ガルディアの騎士団でさえ、予言に抗えぬまま予言の遣いに滅ぼされたというのに目の前にいる人物はその予言の遣いの大群に対して今もなお1人で戦い続けているのだから。
「予言に抗う術がある」
それだけでこの人物は十分異質と言えた。
気がつけば人々は周囲の死体にも気づかない位目の前で行われる戦闘に釘付けになっていた。
その人物は今回の予言の遣いである緑色の毛に覆われた魔物を白く艶やかな素手で掴み、そして持ち上げる。
緑色の巨大な体躯が徐々に持ち上がり、魔物は抵抗するものの悪足掻きにすらならない。
魔物の全長はおよそ2m30cm。
対して掴んでいる人物は1m70cm。
その差60cm。
これだけ体格に差があるのにも関わらずその人物は魔物を片腕で軽々と持ち上げている。
しかも体格で言えば持ち上げられている魔物が筋肉質な体格に対して持ち上げている人物は対照的に細く華奢な体格であり、どう考えても持ち上げることなど到底できるわけがない。
だが、目の前ではそのあり得ないことがいとも容易く現実で行われているのだ。
細く華奢な体格の人物が巨大な体格である魔物を高く持ち上げていると他の魔物がその人物に一斉に襲いかかる。
ある魔物は地面を滑るように
ある魔物は高く跳躍し上から
ある魔物は複数で固まりながら
その人物に襲いかかった。
その数はゆうに30体は超えているだろう。
それは普通なら弱い魔物でもない限り対処するのは到底不可能だろう。
ましてや相手は予言の遣い。
その強さは常軌を逸している。
だが、その人物は襲いかかるのと同時に持ち上げていた魔物を片腕で振り回して迫り来る魔物の大群を薙ぎはらう。
上から来る魔物は縦に振り下ろして対処し、下から滑って来る魔物は横に大きく振って薙ぎはらう。
次々と迫り来る魔物をまるでボールのように打ち返していくその光景はとても奇妙であり、この場にはあまりにも似合わない。
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