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「さて…これで終わりにしようか。」
その人物はそう呟くと眼前に迫る魔物の大群を睨み光る剣を横に薙ぎ払うように振り抜いた。
迫り来る魔物もその人物の眼から死の予感を感じて後ろに移動するもすでに遅い。
薙ぎ払った剣から放たれた光の斬撃が移動しようとする予言の遣いをいつの間にか切り裂いていたのだ。
しかも、予言の遣いを切り裂いた斬撃の勢いは衰えぬまま更に加速し後ろの予言の遣いの大群を貫通して全てを切り裂いていく。
そして全ての予言の遣いを切り裂いた光の斬撃が遠くの高台を破壊して消えると全てが終わった。
予言を覆された光景を目の当たりにした人々はただその場に佇んでいた。
予言が覆された現実に喜ぶこともなく驚くこともなくただ佇ずむ。
いや、実際は喜びたいのだが素直に喜ぶことができない。
突然現れた人物が回避不可能の破滅の予言を覆したのはわかる。
だが、予言を覆した人物の素性が分からないため正直喜ぶことはできない。
敵か味方か?その目的は何だろうか?
明らかにならない部分ばかりで人々には不安しかなかった。
下手をすればこの光景を目の当たりにしたせいで口封じのために皆殺しにされるのでは?
あらゆる可能性を考えるが浮かぶ可能性は自然に最悪な方向になる。
そんな動けない人々を他所に予言の遣いを切り裂いた人物はこっちへゆっくり歩いてきた。
茶色の布が素顔と表情を隠し、不気味な雰囲気を醸し出しながらこちらに向かってくる。
人物が履いているだろうブーツの底と石張りの道がぶつかり合い音を奏でる。
その歩みはゆっくりだが確実にこちらに向かってくる。
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