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予言の遣いとは異なる分からない恐怖に足が震えて動けない。
動けない人々に関係なく人物はいつの間にか人々の正面まで距離を詰めていた。
そして茶色の布に隠れていた両手を正面に出す。
もう終わりだ。切り裂かれて殺される。
人々は人物の動きを見てすぐに目を閉じた。
結局予言がなくとも自分たちは死ぬ運命だったのだ。
いや、何を怯えているのだろうか。
最初から死ぬことを考えていたのではなかったのか。
ただ、殺される対象が変わっただけだ。
諦めよう
そう思いながら死を待つが何も起こらない。
痛みも悲鳴も聞こえない。
代わりに聞こえたのは手を叩くような乾いた音だけ。そして音に続いて男か女か分からない中性的な声が聞こえる。
「はいはい!みんな目を開けて!予言は終わりましたよー!」
声に従い目を開けると目の前の人物が両手を叩いていた。
人物の口調は気の抜けた感じでとてもだが先程まで予言の遣いと戦っていたとは到底思えない。
ましてや悪意があるようには感じられなかった。
「あ、あんたの目的はなんなんだ!?最終的に俺たちを皆殺しにするつもりなのか!?」
相手が話が分かる人物だと判断したのか人々の1人が震える声で質問を投げかけた。
しかしその表情は半信半疑なままで目の前の人物に対する恐怖や警戒心はまだ消えてはいない。
「み、皆殺しぃ!?物騒なことを考え過ぎですよ!?だからみんな私に怯えていたんですか‥?私だってれっきとした人間なのに失礼です!」
質問の内容に驚いたのか茶色の布の人物は手を大袈裟に振ったりして泣いたり怒ったりしながら慌てている。そして勝手に状況を理解し落ち込んだりしていた。
先程の恐怖は何だったのだろうか。
その慌てている仕草や落ち込んだりする仕草は危険と言うよりは寧ろ和やかな印象を醸し出していた。
だが、質問した人物はその仕草に苛立ち更に声を荒げて叫んだ。
「ふざけないで答えろ!あんたは俺たちの味方なのか!そして目的は何だ!」
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